11月7日(前編)の演奏風景

▲モーツァルト ピアノ協奏曲第12番※編成は、ピアノ+弦楽四重奏


▲ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番※編成は、ピアノ+弦楽四重奏+ヴィオラ

終演後のお客様のアンケートより
*最初のお話しで、室内楽版の協奏曲があることを知りました。
*素晴らしい演奏でした。N響メンバーの演奏も素晴らしい。
*田中さんの解説も大変よかった。
*素晴らしい協奏曲を聴いた。目の前で聴くのが良い。
*弦楽器のハーモニーとタイミングの良さを目の前で感じてアーティストの技量の素晴らしさに感激しました。
*ホールの大きさの丁度良い。解説も解りやすかった


後編の聴きどころ
ベートーヴェンの第2番のピアノ協奏曲は、実は第1番より先に作曲されました。そして第5番「皇帝」は最後のピアノ協奏曲に当たります。第2番と「皇帝」の間には約20年間の歳月がありますが、ベートーヴェンがもたらしたピアノ協奏曲の変容には驚愕させられます。モーツァルト等の前時代の作曲家の創意を汲みつつ、前衛的な作品を数多く生み出したベートーヴェンは音楽界の革命児なのです。
さてピアノ協奏曲の室内楽版と聞いて違和感を持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、18、19世紀、音量の乏しかった当時のピアノにはいわゆるオーケストラは巨大過ぎて、日常的には室内楽版で演奏される機会の方が多かったようです。
今回の室内楽版では、2番のオーケストラ部分は小林寛明氏が、「皇帝」は南聡氏が編曲してくれました。
前時代の影響が残る2番ですが、ベートーヴェンのオーケストレーションを弦楽五重奏に移し替える作業は、基本に則りつつも同時に創造力が必要な作業だったとのことです。
「皇帝」は次世代を強く意識して書かれた作品ですから、これまでのピアノ協奏曲と比べオーケストラは管打楽器が大活躍するようになります。南氏は幅広い知識と能力を駆使し、ユニークな編曲に仕上げてくれました。
両協奏曲ともベートーヴェンの精神性を尊重し編曲され、ピアノ・パートはオリジナルのままとなっています。各パートが明瞭に聴取できるなど、オーケストラ版にはないアンサンブルの魅力も楽しめます!

ピアノ田中良茂さんへインタビュー
Qピアノを始めたきっかけは?
A両親が音楽家でした。本当はテレビ局か新聞社に入りたいと思っていましたが、真実に向かい合っていくという点では共通しているかもしれません。

Q好きな交響曲は?協奏曲は?
A演奏する作品は、全て好きになるよう取り組みます。但しブラームスの第1番のピアノ協奏曲は、特別かもしれません。時々作品と自身が異様に一体化してしまうような気持ちになります。

Q好きな作曲家は?
A演奏する作品の作曲家は、やはり全て好きになるよう取り組みます。

Qお生まれは八王子ということで、八王子のイメージ゛は?
A近年の立川の開発には、驚かされています。八王子出身者としてはちょっとジェラシーを感じます(笑)。今後、八王子には立川をお手本のようにしていくのか、他の街にはあまりない恵まれた自然を活かしていくのか、明確に方針を示してほしいです。

Q高校時代は国立音楽大学附属高校ですが、高校時代の思い出は?
A実は中学校も国立にある国立音中に通っていました。学校の性質上数少なかった男友達と、その頃は国立の喫茶店に行ったり、帰り道の立川には毎日のように途中下車しゲームセンターで遊んでいました。現在は指導する立場でもありますが、このような経緯から子ども達には偉そうにしてられません(苦笑)。

Q立川についての印象や思い出はありますか?
A先ほども申し上げましたが、立川の開発は基本的に大きな成功例ではないでしょうか。
通勤、通学にも便利な街ですし、何でも揃っていて「すごい」の一言です。
但し、私が中学生の頃の立川には、まだ基地の名残がありました。昭和史を強く感じさせるあの独特な雰囲気を懐かしく思うこともあります。

Qベーゼンドルファーのピアノについての思い出はありますか?
A「スタインウェイはメルセデス、ベーゼンドルファーはジャガーかフェラーリか」と喩えられることがありますが、たしかにベーゼンドルファーは弾く人、調律師を選ぶピアノかもしれません。
いつも調律をお願いしている村上公一(B-tech Japanの調律師)さんはベーゼンドルファーのスペシャリストです。
村上さんとの出会いによって、ベーゼンドルファーの弾き方を教わった気もしています。
ちなみにドイツではタクシーでもメルセデス・ベンツがよく使用されます。
残念ながらフェラーリ、ジャガーには乗った経験はありません(笑)。

Qピアノ協奏曲を室内楽版で演奏したきっかけは?
A数年ほど前に指揮者の高関健さんから19世紀に編曲されたベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番の室内楽版の存在を教えてもらったのがきっかけでした。
その後、私の演奏するその室内楽版を偶然聴いてくださったのが音楽学者の西原稔さんで、「田中くん、全曲やってみたら?」と言われ挑戦してみることに。
調べていくと18、19世紀にはオーケストラ版以上に日常的には室内楽版が演奏されていたことがわかってきました。
ピアノ協奏曲は絶対にオーケストラと演奏されなければいけない、編曲版はオリジナルに劣る、と言ったような時間とともに刷り込まれてしまう価値観に私達は陥りがちですが、これからはそういったレッテルを少しずつ覆していく時期だと思っています。
さらに室内楽版が普及すれば、才能ある若手ピアニストにピアノ協奏曲の演奏機会を大いに増やすことも可能ですし、50人以上を擁するオーケストラの出向くのが難しい遠隔地や離島の子どもたちにも、機動的に生のピアノ協奏曲を届けることができます。
実際、昨年から八丈島や長崎県の壱岐島の小中学校でも演奏させていただきました。
子ども達に生の音楽を聴いてもらうことは私にとって喜びであり、またたくさんの意味を持つことです。

Q今の個人の活動や今後の活動を教えてください。
A国内外の遠隔地や離島でもっと室内楽版のピアノ協奏曲を届けていきたいです。都市部でもソロ、アンサンブルの活動を増やしていきたいと思っていますので、応援の程、どうぞ宜しくお願いいたします!
ちなみに演奏依頼は、MAT音楽事務所(info@mat-music.jp、Tel:03-6657-5151)までとなります(笑)。お気軽にご連絡ください♪
ありがとうございました。