2. 立川市市民会館での「コンサートのぼうけん」、「もけらもけら」の思い出―
ー財団主催で開催した「コンサートのぼうけん」(2017.2.11) 、「もけらもけら」(2019.6.2)を振り返って、思い出などを伺ってみたいと思います。市民会館での演奏は、技術面も含めてどのような印象ですか?
上野:大ホールはあれだけ広い(1201席)わりには音が伝わりやすいし、見やすい。音響装置を使わず、生音でやったこともあるのですがそれでも成り立つし、非常にまあ、良いホールじゃないかなと思いますね。
松本:地元のホールで公演するのは安心感がありますね。知った顔が見えてあの人が来てるなぁとか(笑)。「コンサートのぼうけん」も「もけらもけら」も楽しくやらせてもらいました。
大宮:地元の財団の皆さんと、こうして定期的にご一緒できていることは何より嬉しいことです。
ー財団主催の場合、立川でやるからこそこれを届けたいという作品を選ばせていただいた、という気持ちがあります。私が「コンサートのぼうけん」を国立オリンピック記念青少年総合センター・小ホール(渋谷区代々木)で初めて見たとき、「ぼうけん」のテーマの音楽がとても印象に残りました。私自身も冒険、旅好きな人間なので(笑)、自分の冒険で出会った景色が見えたというか、観客それぞれの中にある冒険を呼び起こす作品なのではないかと思い、開催したいと考えました。
「コンサートのぼうけん」はロバの中では比較的新しい作品かと思いますが、できたきっかけは何でしたか?
松本:子どもたちって毎日が冒険ですよね。遊びの中から自分の宝物を探しているような。それから音楽を聴くということは感性の冒険です。そこでコンサートと冒険とが結びついて、音の遊びや踊りや映像を取り入れた音楽作品「コンサートのぼうけん」が生まれたんです。
公演写真提供:立川新聞
ーまさに、皆さんの表現し得るものがつまった演目だったと感じました。大人が冒険と思わないようなことも子供は冒険にしてしまうということがあると思います。
「もけらもけら」では、山下洋輔さんとのセッションは毎回違うのだろうなと思いながら観ていました。感性を刺激されるようなところがあるのでしょうか。
松本:今回も最高に楽しかったです。ロバの音楽座は「音楽を遊ぶ」が一つのテーマです。洋輔さんこそが「音楽を遊ぶ王様」ですから、もう刺激だらけでした。ジャズとロバの使っている昔々の楽器は水と油みたいですね、でも同じ音を遊ぶ感覚さえあれば何の問題もないですね。
ー「子どもに対する音楽」というのは他のジャンルでもいろいろあります。それとはまた違う―ジャズは大人の音楽という部分もあると思いますが…かなり計算されている部分と、感性の部分と。そのジャズと融合することによって、子どもたちにとって何かいつもと違うものを感じ取れる音楽だったのかなと、私も思いました。
上野:コンサート自体も2時間近くやっていたんじゃないですか。聞いた話だと、3歳くらいの子どもを連れていたお客さんが、さすがに長くてもたないだろうから途中で出るつもりでその後に用事を入れていたら、子どもが「もっと見たい」と帰りたがらなくて困ったという話を聞きました(笑)。それなりにすごいことだなと思いましたね。
ー踊ったり歌ったりしているお子さんも多かったですが、じっとしていなくても、音楽にだけはずっと集中しているのだろうなと感じましたね。山下さんとのセッションの中で印象的なことはありましたか?思いもよらないようなことですとか…。
上野:思いもよらないことだらけ(笑)。こちらのたわしの合奏に山下さんが参加してくれたり。
ー今までの「もけらもけら」とも全然違いましたか?
松本:立川の公演では新しい挑戦もさせてもらいました。絵本を見ながら音楽を作る作品なので毎回いろんな形に変容します。音楽って「間違えた」とかに囚われがちだけど、洋輔さんと演奏していると、間違いも含めて音楽になるみたいな愉快な感覚が味わえますね。洋輔さんは年を取れば取るほど、どんどん好き勝手にやってくれていいですね(笑)。
上野:いろいろやっていて当然、互いの意向が違ってくることもいっぱいあるんですね。ええっ!そっちに行くのか!とか(笑)。でもまたその中でどんどん新しい方向に展開させていって。
ー2組の音楽が合わさって生まれる新しいもの、というのと、一緒にやることによってそれぞれの音楽に新しいものが生まれている2つの面がある感じがしますね。
松本:そうですね。
「もけらもけら」公演 J:COMデイリーニュース放送